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JANICKI MACHINE DESIGN 社(U.S.A.)訪問報告書

Autoship Systems Corp.(CANADA) のディーラーミーティングに参加するため5月末に北米を訪問する機会があった。 20世紀を目前にして、昨年と比べても一段と加速していた、生き残りを賭けたInformation Technology (IT)革命の凄まじさを肌で感じる旅となったが、超大型形状の3次元CNC切削の現状を知るために、Vancouverから国境をこえて南へ約130kmの人口が5,000人以下の、西海岸北部のありふれた田舎町にあるJANICKI MACHINE DESIGN社(U.S.A.)を訪問した。

現在、北米で最大規模の3次元5軸CNC切削機(68ft×19ft×8ft)が、真新しい工場で稼働中であったが、アメリカの典型的なベンチャービジネスの例にもれず、若い人がほとんどの会社だった。従業員は第1工場と第2工場(車で5分ほど離れている)で総勢50人ほどが働いているとのことであった。短い訪問であったが、 Avia Design社のGrahame Shannon氏の紹介でもあり、又、氏に同伴して頂いたおかげで、北米最大の5軸CNC切削機をフルに使いこなすためのノウハウを見せてもらうことができ、事業としても成功していることが、一目でよく解る大変有意義な訪問であった。

大型の切削機の場合、精度を維持するためには強固な基礎が必要となるが、CNC切削機本体についての投資はもちろんのこと、CNC切削機が据付られる基礎についても妥協することなく思い切った投資をしたことが、今日の成功につながったとのJanicki氏の説明には説得力があった。

40FTクラスのモールド(メス型)が切削中であったが、この船の場合、ボートショーに間に合わすためには、木型からスタートしたのでは間に合わないため、メス型モールドをダイレクトに作成し1号艇を建造したいとの、客先からの要求で変則的な切削手順となったとのことであった。当然のことながら、ストライプやステップ付きの船底も問題なく高精度に切削されていた。切削スピードは約1 m/sec前後で仕上げ工程の切削が行われていた。

JANICKI MACHINE DESIGN社が、この事業に乗り出した初期段階では大型の発泡体ブロックを丸ごと削り出していたが、輸送中にモールドの表面にひび割れが生じたりする問題が発生したこともあり、さらにコストの低減からも、現在では井桁状に組んだ米松合板によるモールドベースに、現場発泡のウレタンフォーム(?)を20〜50 mm程度の厚さ(2〜3回連続スプレーアップ?)となるように吹き付け(必要に応じてFRPマットで補強する場合もあるとのこと)、その表面を粗削りした後に、自家製の硬質パテ(成分は秘密)を3回連続でスプレーアップし、20 mm程度の厚さの最終切削層を作成し、それを2段階で切削するとのことであった。

この時使用するスプレーアップガンは、それぞれのフォームやパテの粘度に合わせて調整された専用のポンプアップ式のスプレーガンで1台 US$30,000−とのことであった。いずれの材質もそれぞれの役割に合わせて最適の硬さと粘り強さを合わせ持つように試行錯誤の上、開発されたものとのことであった。

最終の切削面は1〜2 mm幅となる切削凹面(深さ0.1〜0.2 mm)の筋状の切削マークが残っていたが、FRPボート用のモールドの場合、これ以上の切削は行わないとのことであった。この後モールド(木型)は別の工場に運ばれ、手作業によるサンディングの後、傷や切削ミス部分の手直しのためのパテ作業とそれに続くサンディングの後、DURATEC SURFACING PRIMERをスプレーして表面を水研ぎ、バフ研磨して木型の仕上げとなる。

ここで作られる木型は、遠くはフロリダ州までトラック輸送されるため、輸送による振動や,気温差や湿度差による収縮に耐える必要があり、色々な試行錯誤の結果、最終的に現在のシステムに落ち着いたとのことであった。

また、現在では客先の短納期の要求や、トータルコストの面から、メス型モールドまでを一括して受注して仕上げるケースが多くなったとのことであった。これは、品質やコストや納期においても、多数のボートメーカーが、JANICKI MACHINE DESIGN社への外注に何らかのメリットを認めてくれているからではないかとのかとで、今後もこれに答えるべく人員の増強に勤めるとともに、より短納期やコスト削減に取り組んで行きたいとのことであった。

木型の場合はフロリダ州まで、メス型の場合は台湾まで輸送した経験があるとのことであった。メス型の場合は米松合板モールドベースにはFRPオーバーレイが施されていたが、木型を日本まで輸送する場合は米松モールドベースに樹脂コーティングを施すなどの表面処理が必要と考えられる。 モールドの精度は、航空機用については±0.2 mmの型精度が出ているかをチェックの上、出荷する必要があるとのことで、2〜3万ドル以上すると考えられるFARO社の3次元デジタイザによる寸法チェックが、1m×1m×2m程度のキャノピーモールドについて行なわれていた。

型表面の直線度、平行度、凹凸、うねり等については、40FTクラスの型を見る限りでは、当たり前のことだが、精度の高さが確認できた。ほとんどのボートメーカーが、3次元5軸CNC切削により、ほぼ完全な左右対称の型形状が間違いなく確実に得られることが、特に大きなメリットとなっているとのコメントを寄せているとのことであった。現在では、航空機向けのモールドの製作よりも、ボート業界向けの仕事の方がより多くなってきており、

  • Jenmerグループ(Larson他5社)
  • US Marin (Baylier)
  • Luhrsグループ (Luhrs, Hunter 他2社)
  • MAINSHIP
等のモールド作成を定期的にを引き受けているとのことであった。他にも、3次元5軸CNC切削機を導入しているボートメーカーも含めて、他のボートメーカーからの特注の仕事も増えており、こなし切れないため、2台目のCNC切削機の導入を計画中で、人もそれに対応させるため増員中とのことであった。

仕事は、ボートメーカーの大小に関わらずほとんどの場合、E-mailで3次元サーフェイスモデルをIGESかUnigraph形式のデータを受け取り、コンピュータでデータの詳細を確認の上、見積を行ない、スケジュールを打ち合わせの上、客先が納得すれば、受注が決まるとのことであった。現時点のスケジューリングでは40FTクラスで、受注後5〜6週間でモールドまで仕上げて納品可能とのことであった。

3次元サーフェイスモデル用のプログラムはUnigraphを使っており、4台が稼働しているのが見受けられた。会社は、必要なもの以外には無駄なお金を費やさない方針らしく、事務所の天井は未仕上げのままで、急成長途中の会社として健全に見えた。社長のJhon Janicki氏は40才そこそこと見受けられたが、FRPボート業界のニーズに応えるべく、リスクは承知で、パイオニア精神で、何でも実行して証明して見せる典型的なアメリカ人のタイプに見えたが、同時に、経営者としても優れた感覚の持ち主であるとも感じられた。

工場の作業環境についても、米国の厳しい労働基準局や環境保護局の要求をクリアするために努力している様子であった。好むと好まざるに係らず、ボートメーカーは、消費者が求めるデザインと品質を満足させながらも、低コストでFRPボートの大量生産に取り組まざるを得ず、その上で、尚且つ利益を上げて競合他社との競争の中で生き残って行くためには、JANCKIのような会社が伸びて行かざるを得ないことが体験できた。今後JANICKI MACHINE DESIGN社に日本から直接仕事を依頼するような機会は少ないかもしれないものの、このような会社がすでに存在し、多くの北米のFRPボートメーカーが本格的に利用していることを、十分に肝に銘じておく必要があると考える。

今後、益々加速してゆくInformation Technology (IT)革命の中で、Autoship のような高度なNURBS曲面が扱える3次元サーフェイスモデルデータを自由に作成できるプログラムが、安価なPCで誰にでも使えるようにはなった現代では、3次元サーフェイスモデルを自由自在に作り出せるコンピュータ職人と呼べる人材を、如何に多く育てて行くことができるかが、すべての製造業にとって、企業の生き残りのために、さらに重要になってきたことを実感せざるをえない北米出張であった。

有限会社 アドバンスクラフトデザイン
代表取締役 松本 久

追記:
日本国内でも、3次元5軸CNC切削機により、プレジャーボート用のモールド切削の外注に対応されている会社が存在していますので、ご紹介させていただきます。

その会社は、京都府久世郡久御山町に事務所があります、
『株式会社 ミタテ工房』です。

より詳しいお問い合わせは、以下へお願い致します。
TEL : 075-631-9278(代)
FAX : 075-631-7545
e-mail : info@mitate-kobo.co.jp
http://www.mitate-kobo.co.jp

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